ブログ

2022年07月

2022.07.16

お金が貯まる節税、貯まらない節税

職業上、「今年は利益が出そうなんです。何か良い節税方法はありませんか?」という声を多く頂きますので本日は節税の話を。

このブログは公認会計士・税理士である財務コンサルタントが中小企業の経営力を強化して日本を元気にするためにぜひ知っておいてほしいと思う情報を共有するために書いたものです。

 

結論:節税の多くは納付時期を分散させるもの。目先の税額だけに囚われず、資金繰りへの効果や経営状況への影響を理解して節税方法は検討するべきである。税金は少くて済んだ→でも利益が出なかった→結果お金が残らなかった では本末転倒である。

 

節税とは税負担額をルールの範囲内で分散、軽減することです。

そして節税には大きく分けて「①ある年度の税額を軽減する節税」と「②税額そのものを軽減する節税」があります。さらに重要な観点として、「追加支出を伴う節税」と「追加支出を伴わない節税」があります。

 

個別にあげだすときりがありませんのでイメージしやすい代表的な節税方法(法人税を想定)を以下記載します。

 

①ある年度の税額を軽減するもの ~“経費の先取り”、“税金の繰延べ”~

a.事業に関連する経費を漏れなく計上する(未払経費などの経費処理漏れがないか徹底)

b.課税所得増加の年度に将来予定していた経費項目を前倒しで実行する(修繕、広告宣伝、消耗品の購入など)

c.節税のために経費支出を追加で捻出する(節税をうたった保険の追加契約、交際費の増加など)

d.税法上認められる費用(貸倒引当金)や損失(遊休固定資産の廃棄、有姿除却など)を計上する

e.一定の減価償却資産について本来耐用年数に渡り償却していくところ、即時償却や特別償却など単年度の償却費の増加が認められる制度を活用する

 

②税額そのものを軽減する節税

f.税額控除の制度(算出税額自体を減額できる制度)を活用する(雇用促進税制、所得拡大税制、中小企業投資促進税制)などを活用する

 

   にあげた節税方法は、あくまでもある年度の税額を軽減するものであり、いわゆる“経費の先取り”や“税金の繰延べ”と呼ばれるものです。前倒しした経費はその分将来の利益増加要因となりますので、ならして考えると税負担額は増えも減りもしませんが、税負担を当期と翌期以降に分散することができます。

 

   にあげた方法は税額控除の制度適用により税負担額そのものが減少するため、純粋に税負担を軽減する節税といえるでしょう。ただし、政策的な制度ですので、適用するための要件に一定の設備投資や人件費の増加など経営判断の結果適用できるものが多いです。

 

さらに上記を「追加支出を伴う節税」と「追加支出を伴わない節税」に分けてみましょう。

 

追加支出を伴う節税

,c

 

追加支出を伴わない節税

a,,e,f

 

経費の調整、特にc.予定していない経費の捻出による節税は、ある年度の税額だけに注目すると税負担が軽減されているように感じますが、実際には節税のための追加支出が生じており、将来の税負担増加を加味すると、結果として税金以外の資金が流失し、資金繰りにはマイナスの影響となります。

当然のことですが事業に関連しない経費を計上した場合、節税ではなく脱税となりますので重加算税も併せてさらに不要な支出と税務調査への対応が生じることになります。

 

いかがでしたでしょうか。

 

節税は事業のため家族のために手元資金を少しでも確保しておきたいと考え検討する方がほとんどではないかと思います。

「利益が出そうだから何か経費を!」と考えるときは「その支出は事業にとって本当に必要なものであるのか」、「税金を負担した方が結果として資金が確保できるのではないか」、節税の目的とその効果、資金繰りへの影響を考えてみてください。

 

この度はブログを読んで頂きありがとうございました。

経営に“財務の目線”を

 

財務コンサルタント 谷口純一

2022.07.14

つぶれにくい会社の作り方

経営にはリスクがつきものであり、特に昨今は時代の変化に加えコロナ、紛争などの地政学リスク、物価高騰など予測できない事態が頻発しています。経営者の方もこれまで通りの対応や自己のノウハウだけでは予測不能な将来について不安を抱えていらっしゃる方も少なくないと思います。

 

本日はつぶれにくい会社の作り方を。

このブログは公認会計士・税理士である財務コンサルタントが中小企業の経営力を強化して日本を元気にするためにぜひ知っておいてほしいと思う情報を共有するために書いたものです。

 

結論:つぶれにくい会社とは資金繰りが安定した会社、資金繰りを予測できる会社である。

 

世の中には利益が出ていてもつぶれる会社、売上は減っていないのにつぶれる会社というものが存在します。

なぜなら会社のお金が無くなってしまったからです。

 

企業がつぶれた理由にはコロナで稼働が落ちた、部品の供給が遅れた、競合他社が現れた、気付いたときには資金繰りが悪化しており追加融資が遅れ手遅れだったなど企業ごとにさまざまですが、多くのケースに共通していることがあります。

 

それは資金繰りを見誤るということです。

 

資金繰りを予測できる体制が整っていないと、このままだといつまで資金がもつのか、そのためにいつまでに資金調達が必要かということの検討にまず時間がかかり、それから資金調達に奔走し、対応が遅れてしまい資金がつきてしまうケースがあります。

 

対応時期が遅れるとそれだけ資金調達の支援内容も専門性が高くなるため専門家報酬も高水準とならざるを得ません。お金がないところに専門家報酬のダブルパンチとなってしまいます。

 

つまり、平時のときでも資金繰りの目線を持つ、資金繰り管理(振り返りと予測)が出来るようにしておくことがつぶれにくい会社になるために必要だということです。

とはいえ資金に困っていないのに外部コンサルを雇う気にならないのも理解できますので、常日頃最低限の資金繰り状況の確認は怠らないようにして頂きたいです。

 

これだけはして欲しい資金繰り状況の確認

 

   35期間の現預金残高の推移をチェック

ここ数年で現預金残高は増加傾向か、減少傾向かチェックしましょう。減少傾向であればその原因を深堀り、一時的なものなのか回復の見込みがあるのか、必要な対策はないのか検討しましょう。

 

   キャッシュフロー計算書の営業キャッシュフローの推移をチェック

営業キャッシュフローとは、設備投資や借入金の実行返済以外の本業から得られるキャッシュです。プラスで推移しているかマイナスで推移しているか確認することで本業の資金獲得能力をチェックすることが出来ます。

 

   毎期の業績の振り返りの際に資金繰りについても振り返る。

少なくとも年に一回は資金繰りの観点で振り返りを実施しましょう。

本業のキャッシュに比べて予定している投資額が多額ではないか、借入金の返済額が本業のキャッシュを超えているのであれば追加融資がされない可能性やそれを回避するための資金繰り改善策の検討に早期に着手できます。

 

   資金繰りを相談できる人間をつくる

資金繰りの予測や振り返りにはそれなりの経験値や専門性が必要です。顧問税理士さんや銀行担当者に相談しても明確なサポートが得られない場合、他に頼れる専門家がいないか探してみましょう。

 

 

本日は以上となります。

資金繰りの重要性について考えて頂き、資金繰りに不安を感じず本業に専念して頂ける環境を整えることで、つぶれにくい会社を目指すだけではなくより事業を成長させるきっかけになれば幸いです。

 

 

この度はブログを読んで頂きありがとうございました。

経営に“財務の目線”を

 

財務コンサルタント 谷口純一

2022.07.13

経営計画を作る経営者の目的

財務コンサルタントあるあるなのですが、

 

私:「経営計画作りませんか?」

社長A:「先のことなんてわからん」

社長B:「うちみたいな小さな会社に必要ない」

社長C:「数字は頭に入っている」

社長D:「会社まわってんねん」

社長E:「どうせ計画どおりにならない」

社長F:「自社のマンパワーじゃ作れないし利益も生まないのに外部に出す金はない」

社長G:「そんなことより取引先紹介してもらえませんか」

 

経営計画作成を提案すると、作らない理由がこれでもかと弾丸のように飛んできます。

その反面、経営計画を作成している会社の経営者はその目的をなかなか発信してくれません。

 

本日のテーマは中小企業で敬遠されがちな経営計画について、経営計画ってなに?経営計画を作成する経営者の目的についてご紹介できればと思います。

 

経営計画の策定が自社にとって必要か否か、考えるきっかけになれば幸いです。

このブログは公認会計士・税理士である財務コンサルタントが中小企業の経営力を強化して日本を元気にするためにぜひ知っておいてほしいと思う情報を共有するために書いたものです。

  

結論:計画を策定している会社はつぶれにくい。計画はただ作るだけではなく振り返ることが重要。少し先の将来が予測できるようになる。 トライ&エラーができる会社になる。

 

経営計画ってなに?

経営計画とは、「経営者方の頭の中にある事業の将来像を具体的かつ明確に可視化した資料」です。

こんなことを言うと拒否反応を起こしてしまう経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

でもそういうことなんです。

 

ただし、事業の将来像とは「理想像」のことではありません。

 

経営計画に必要な要素

   経営計画の各項目の前提の設定に手を抜かない(現実的な実行性の高い計画)

   経営計画と実績値を振り返り、差が出た科目についてとことん追求する

   損益計算書だけではなく貸借対照表計画、資金繰り計画も作成する

 

経営計画を作成する経営者の目的

効果①:売上高を上げたい 

理由:経営計画作成にあたり過去の得意先別や商品別の売上の傾向を分析することで、自社の強みや弱みが見えてきます。強みを生かす努力をするのか、弱みを維持する努力をするのかは経営判断ですが、根拠をもって現実的に達成可能な売上目標を目指す場合とやみくもに営業がんばろうと目指す場合、どちらが売上高増加を実現できるでしょうか。

 

効果②:利益を上げたい/確保したい

理由:精度の高い変動費と固定費を経営計画に落とし込むことで、原価率が上昇傾向の科目や、長年見直していなかった利益を圧迫している固定費などをあぶり出すことができます。経営計画は達成可能であることが前提ですから、その副産物として管理可能な費用の見直しや販売単価の改訂、設備投資案などのアイデアが出ることもあります。もちろん十分な検討の結果、経営計画の利益が従前を下回る計画となる場合もありますが、作成しない場合よりも早期に利益改善に着手することが出来ます。

 

効果③:つぶれにくい会社にしたい

理由:資金繰りは企業が継続するために最も重要な要素です。経営計画を策定する際に、損益計算書だけではなく貸借対照表、資金繰り表についても計画に落とし込み、目標利益の設定の際には資金繰りの観点からも計画を立てることが重要です。資金調達がどの時期に必要か予測することが出来れば、経営計画をもって金融機関に支援を要請することもできます。

 

効果④:お金を貯めたい

理由:経営計画により目標利益達成に向けて行動することで、経常収支(本業からの収支)が改善すれば経営計画策定前よりも収益力が向上し、企業の財務基盤が安定します。

 

効果⑤:トライ&エラーが出来る企業になりたい

理由:経営計画の前提が明確であれば、結果実績が未達であった場合でも想定と何が異なったのか、改善策も具体的に考えることができます。このトライ&エラーが出来る企業か否かが経営計画を作成している会社とそうではない会社の最も重要な点かもしれません。

 

いかがでしたでしょうか。

経営計画を作成する経営者の目的は、会社の規模に関係なくどの企業の経営者の方も常の考えていることではないかと思います。。

 

つぶれにくい会社、トライ&エラーができる会社、いつの時代でもそういう企業が生き残りますよね。

予測不能な事態が頻発している昨今、経営計画はまだハードルが高いと考える経営者の方も、一度業績の振り返りにプロの意見を取り入れること検討してみてはいかがでしょうか。新たな気付きがあるかもしれません。

 

この度はブログを読んで頂きありがとうございました。

経営に“財務の目線”を

 

財務コンサルタント 谷口純一

2022.07.05

人間ドックと健康経営

 

先日、人間ドックに行ってきました。

35歳にして初めて胃カメラを飲んだのですがもう二度とやりたくないと思いました。

とはいえ健康第一ですので日々の節制(時に甘やかしますが)と定期的な検診はするよう心掛けています。

 

これは事業経営にもいえることで、最近では「健康経営」とも言われ注目されています。企業はめまぐるしく変わる経営環境の中で事業を継続するためさまざまな努力をされていることと想像しますが、本日は事業を継続させるため必要な定期的なチェックの話を。

このブログは公認会計士・税理士である財務コンサルタントが中小企業の経営力を強化して日本を元気にするためにぜひ知っておいてほしいと思う情報を共有するために書いたものです。

 

結論:事業を継続するためには変化に「気付ける体制」を構築すること、そのために自社を「数字で語れる」ようになることが重要である。「数字で語れる」会社はトライ&エラーができる会社になりやすい。企業にも定期健診を。健康経営。

 

変化に気づける体制

事業活動は会社の経営者、担当者の方のご経験やノウハウにより日々実行され、マーケティングや営業活動、製品開発などの事業活動、企業努力の結果が今日の企業の土台となっています。

 

そのため経営環境や経営状況(経営成績、財政状況)の変化についても、経営者の「肌感」や「感覚」として気付くこととなり、その変化に対応してきたからこそ事業は継続しているのです。

 

ただし、病気と一緒で「肌感」や「感覚」はある程度影響が大きくなったり目に見えて変化がないと見過ごしてしまうことがあります。早期発見、早期治療の重要性は健康のために広く知られていますが、企業にも同じことが言えるのではないでしょうか。

 

事業活動の結果や状況を最も客観的で定量的にあらわしているものはほかでもない決算情報です。

「血圧が上がった」、「尿酸値が上がった」のと同じように、数値として定量的に確認できる変化を見逃さないために決算の振り返りをしっかり実施する体制を構築して頂きたいと考えます。

 

自社を数字で語れるようになる

「数字は語る」とよく言います。

 

我々は財務(税務、資金繰り)のプロであり「数字を語る」ことは出来ますが、会社を「数字で語れる」かというとそんなことはありません。「数字で語れる」には経営者の方と協力して深掘りすることが欠かせません。

 

文字だけだとわかりにくいですよね。(笑)

 

「数字を語る」

・売上高が前年比10%増加しています。

・原価率が上昇しており、利益率が低下しています。主に材料費率がこの2年間で5%上昇しています。

 

「数字で語れる」

・売上高は既存製品の市場で競合製品が投入されたため頭打ちとなり、なんとか値下げにより前年比5%減に留めましたが、新製品の開発に成功し、新製品売上が〇〇万円増加した結果、前年比10%増加しています。

・原価率は新製品の材料費率が他の製品と比して高いため上昇しています。

 

いかがでしょうか。

「数字を語る」のと「数字で語れる」のはぜんぜん違いますよね。

 

その数値の裏にある背景や過程(いわゆる定性的な情報)を把握しているのはほかでもなく経営者の方ですので、我々が気付く状況変化やトレンドに経営者の意見を加えることで経営判断に活かせる振り返り情報にすることができるということです。

 

数字を語れるとトライ&エラーができる会社になる

 

上記の例で示したように、会社の数値を「数字で語れる」と、その事実から現状理解や改善のための新たなアイデアが生まれるというメリットがあります。

 

・値下げしなかったら売上はもっと減少していたのか

・値下げしなくても売れる付加価値は何か、競合製品との差別化はできないか

・新製品の売上高は増加したが全体として利益は増加しているのか

 

建設的な意見からトライ&エラーができる会社は経営環境の変化への対応力も改善行動への機動力も数字を語れない会社より圧倒的に強くなるのではないでしょうか。資金調達が必要な場合でも金融機関に正しく自社の状況を伝え支援を要請することもできます。

 

本日は以上となります。

会社にも人間ドックのような定期健診を検討してみてはいかがでしょうか。

 

この度はブログを読んで頂きありがとうございました。

経営に“財務の目線”を

 

財務コンサルタント 谷口純一